幼い頃に、映画のような恋愛をしたいと思ったことはありませんか。
歳をとるにつれて”幼い頃に抱いた恋愛”と”現実の恋愛”とのギャップに徐々に戸惑いながらも慣れていきますが、西UKOさんの『宝石色の恋』は、むかし夢見た恋愛を思い出させてくれるような漫画です。
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まるで映画のよう
言葉にするとあまりにもベタで聞き飽きた褒め言葉ではありますが、この漫画を一言で説明するにはピッタリな言葉です。
前作の”Collecters”と同様に、今回も主に働く女性同士の恋愛についての漫画で、登場人物がほとんど学生の百合漫画にある”ときめき”や”あまずっぱさ”というものはありません。
その代わりに、とてもロマンチックです。
現実世界では恥ずかしくて出来ないような・思いつきもしないようなテーマに沿って、登場人物たちが芝居がかったような台詞を喋り、動きます。
現実世界で同じことをしたらきっと引かれてしまうことでしょう。
そうです。ロマンチックというのは、言い換えると非現実的と置き換えることができます。
しかし、この作品の素敵な部分はまさにその”非現実”。
短編集なので、それぞれの登場人物を深く掘り下げるということはありませんし、丁寧な説明もありません。
しかし、掘り下げないからこそ、主題である恋愛が”よりロマンチックに映ります”。
登場人物の日常生活は必要ない、ただそれぞれの恋愛だけに焦点を当てる。
そのようにして描かれる”非日常感”は、恋愛がいかに美しいかということを私たちに思い出させてくれます。
このような非現実性は、作者の描く人間が洗練されているからこそ可能な内容かなと。
あまりにもロマンチックすぎて、他の漫画家さんが同じ題材で同じ動きをさせたら滑稽に描かれてしまうのではないか…
西UKOさんの描く均整のとれた美しい女性たちだからこそ、恥ずかしくならず読めるのではないだろうか…
そう思わずにはいられないほど、内容と絵がマッチしています。
ロマンチックなテーマ、均整のとれた容姿の登場人物、そして優雅な立ち振る舞い。
まるでヨーロッパの映画をみているような気分になりました。
ファンタジーではなく、お姫様も登場しなければ、魔法もでてこない。
しかし、確かなロマンがある。
まさに”宝石色”という表現がふさわしいほど、キラキラと輝く漫画でした。