PSYCHO-PASS ASYLUM 1 (ハヤカワ文庫JA)

世界を視るまなざし。吉上亮『PSYCHO-PASS ASYLUM 1』

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はじめに

アニメ”PSYCHO-PASS サイコパス”(以下、サイコパス)を既にご覧になっていて、このノベライズの購入を迷った末にこのブログに訪れてくださっている人へ。
最初にお伝えしておきます。買いで間違いありません。

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サブキャラクターのスピンオフ短編集

アニメ2期や劇場版の公開、それに伴った第1期の再放送など、2012年の放送開始から約一年半の時を経て再びブームになっている”PSYCHO-PASS サイコパス”(以下、サイコパス)。

今作は、本編アニメのサブキャラクターに焦点を当てた短編集です。
短編集の第一弾である今作では、”チェ・グソン”と”縢秀星”の過去の出来事について書かれています。
タイトルに使われている”ASYLUM”とは、日本語で” 避難・亡命・保護”などの意味があるようで、このネーミングもSFらしくてかっこいいですね。

作者は”2010年代最注目の新人作家登場”と唱われた”吉上亮”さん。
前作である”パンツァークラウン フェイセズ”は未読であるため、否が応でも期待が高まります。

無窮花 / チェ・グソン

アニメ本編で、凄腕そうではあるが目立つ場面のないまま消えていったチェ・グソンが槙島と行動をともにするまでの物語。
ここで特筆すべきは”日本国外”の状況が描かれているということ。
アニメ本編では、日本のシビュラシステムというものが物語の中核を担っていましたが、今作の前半では当時の他国(朝鮮半島)の状態について述べられています。
他国に対する日本の立ち位置や、世界全体がどのような状態になっているのかを知ることで、アニメ本編で日本人が享受しているシビュラシステムの恩恵について理解を深められるのではないかと思います。

内容としては、救いがなく切なくなるような話でした…
チェ・グソンというキャラクターをみる目が180度変わってしまうこと間違いなしです。
また、アニメでは表現できない目を覆いたくなるような残忍な描写も目白押しです。

レストラン・ド・カンパーニュ / 縢秀星

こちらは、アニメの序盤と同じような雰囲気のする作品です。
アップテンポに軽い気持ちで読むことができます。
シビュラシステムの是非についての議論はないですが、アニメ本編で槙島がバイオテロを起こそうとしていた”ハイパーオーツ”の発展と弊害”というテーマが物語の根底にあります。

タイトルから想像できるように”食”が物語と密接に関係しており、アニメ本編で縢秀星が料理を趣味としていた理由が解き明かされます。

キャラクターのファン以外にも

私の拙い文章で、うまく伝わっている自信がないのですが、スピンオフとして素晴らしい作品です。

  • 物語として楽しめること
  • サブキャラクターについて理解が深まること
  • 本作を通して、アニメ本編では不十分だった世界観(背景)を掘り下げられること

この三点がどれも欠けることなく、高い水準で描かれています。
特に、三つ目に対するアプローチが非常に秀逸で、
アニメ本編とは直接関係のない出来事を扱いながらも、キャラクターに対する理解だけではなく、サイコパス全体に通じる世界観が補完されています。

本作に登場するキャラクターが好きな人はもちろん、キャラクターに興味がない人にもお勧めできる一冊です。

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デザイナーをしています。ジャンル関係なく気になった漫画を読んでいます。オススメの漫画を教えてください。 Twitter:@TakemitsuaN