日々新たに目覚めるために/ソフィーの世界 ヨースタイン・ゴルデル

ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙

三千年を解くすべをもたない者は闇のなか、
未熟なままにその日その日を生きる ────ゲーテ

酔っ払って部屋に戻ってきたのはもう明け方近くだった。眠い目を擦りながらパソコンに向かったとき、不意に真面目な文章を書きたくなったのだ。
テキストソフトを開き、では何を題材に書こうかと考えたときに、書くべきテーマはソフィーの世界以外には無いだろうと確信していた。
恐らく考えるまでも無く初めから、それはわたしの中で既に決まっていたことだったのだろう。

多少なりとも読書をするひとであれば、少なくとも何冊かの「人生を変えた本」と呼ぶべきものを持っていることだろう。わたしにとってソフィーの世界は、まさしく人生を変えた本のひとつである。
わたしがこの本を読んだのは大学一年のとき。学校へ行く道中に立ち寄ったブックオフで購入し、その後近くのマクドナルドで全て読みきってしまった。夢中で読みふけり、結局そのまま、その日は大学へは行かなかったことを憶えている。
読み終わったあとの惚けた頭で、どうして高校生のころ、進学先を決める前にこれを読まなかったのかと後悔し、そしてその後の進路を決定付けるきっかけともなった。

ソフィーの世界は、ノルウェーの哲学教師ヨースタイン・ゴルデルによって1991年に出版された、哲学の入門書ともいうべきファンタジー小説である。
主人公のソフィーは14歳の女の子。この物語は、ある日ソフィーが謎の手紙を受け取ることから始まる。宛名も差出人の名前も無いその手紙にはたった一言、「あなたは誰?」とだけ書かれていた。

当時の私はあまりに幼く、あまり記憶には残っていないのだが、自分探しの旅という言葉がブームになったことがあったらしい。真偽の程は定かではないが、そのきっかけになったといわれているのがこのソフィーの世界なのだそうだ。
「ひとは何のために生きるのか」であったり、「自分は何者なのか」であったり。そのようなことを考えたことの無いひとは、恐らく居ないだろう。根源的に人間が抱く、漠然とした疑問は、恐らく誰しもに普遍なものだと思う。

この本はそんな問いに、決して答えてはくれない。だが、微かな道筋を与えてはくれる。

この本について考えたときに、いつも思い出す言葉がある。
それは哲学講座が始まる最初の一歩で説明される、「いい哲学者になるためにたった一つ必要なのは、驚くという才能だ」というもの。
ひとの感情は数多あれど、その中でも最も尊いもののうちの一つこそが驚きだと、私はそんな風に思う。

驚くとは即ち、未知との遭遇に他ならない。そこには疑問があり、そしてそれを追求しようとする心構えがある。
そして驚きは常に、自分の外側からやってくる。自分自身で、いわば自作自演で驚くことは不可能だからだ。

だからこそ、自分自身を常に外側に開き、未知に触れることを恐れてはいけないのだろうことを、この本は伝えている。

世界に慣れきって、驚くことをやめたとき、人の感情というものは錆び付き、鈍化する。
この言葉を胸に。

いつでも新しいものごとを吸収していくために、わたしは日々本を読み続けるのだ。

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人が物語を読むのは、人生が一度しかないことへの反逆だ。 そんな言葉を言い訳にして、積み本が増えていく毎日。 Twitter:pooohlzwg