「ギャンブル漫画」という言葉を聞くと、福本伸行さんの『カイジ』を思い浮かべてしまうのは、もはや仕方のないこと…
尖ったアゴをはじめとするインパクトのあるキャラクター、「ざわ…ざわ…」という特徴的な擬音。そして数々の名言たち。
あまり漫画読まない人のなかでギャンブル漫画=カイジとなっている可能性すらあります。
そんな化け物のような作品が覇権を握っているギャンブル漫画というジャンルに、新たな風が吹き込んできました。
河本ほむら×尚村透のタッグによる『賭ケグルイ』。
美少女がダークな微笑みを浮かべている表紙が特徴的な本作も、ストレートなギャンブル漫画です。
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学園+ギャンブル
この作品の大きな特徴は舞台が学園だということ。
麻雀部を扱ったものや、部活動の一環で賭け事などの描写などはときどき見かけますが、通常の学園生活のメインを賭け事に置く作品は珍しいのではないでしょうか。
主人公は「鈴井涼太」。これといって特徴のない今時の高校生男子です。
この主人公が、学校内のギャンブルに負けて借金を負うと同時に、“賭け事で負けた生徒は家畜になる”という学園のルールによって悲惨な扱いを受けるところから物語は始まります。
家畜となり理不尽な扱いを受ける涼太…
そんな歪んだ学園に一巻表紙の女の子「蛇喰夢子」が転校してきます。
学級委員だった涼太は、夢子の案内役に任命され、この学園の現状やルールを説明することに。
物腰も柔らかく・言葉遣いも丁寧な夢子でしたが、賭け事の話の際になったときだけ、どうにも様子がおかしい…
そうです。彼女はギャンブル中毒だったのです。
そして、賭け事に金銭の損得を越えた喜びを見いだす夢子は、この学園のルールを作った生徒会に勝負を挑んでいきます…
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ロジカルな賭け事
この漫画のなかで扱われているギャンブルにおいて、「運」の要素は非常に薄いです。
ギャンブル漫画で、運以外の何の要素で作品を盛り上げるのでしょうか…
ギャンブルから運の要素をとったら答えはひとつしかありません。イカサマです。
いかに相手の目を欺き自分の勝ちに近づくか…
そして、話術を駆使してどのように相手を術中に嵌めるか…
そのようなある種の技術的な描写に特化したギャンブル漫画です。
そういった意味では、冒頭で書いた福本伸行さんの『カイジ』よりも、甲斐谷忍さんの『LIAR GAME』の方が雰囲気は近いのかもしれません。
そして、これらのイカサマ漫画で一番大事なのは解説。
どのようなイカサマか理解できない…ということはなく、どのギャンブルやイカサマについても、非常に分かりやすく丁寧な解説(ネタバレ)がついてきます。
解説があるまでは予想もつかずにドキドキしていたギャンブルが、解説が入ることによってストンと腑に落ちる感覚は非常に気持ち良いです。
そして、各勝負が一冊毎にまとまっているため、単行本だけ読んでいても次が気になりすぎるというストレスがないのも素晴らしいです。
この手の漫画は、期待を煽って次巻に続く流れが多い気がするのですが、この漫画はそのような引っぱりはなく、一巻毎の満足度も高いです。
また、『失楽園』の作者さんである尚村透さんの描く登場人物が非常に可愛いのも大きな魅力です。
頭を働かせなければいけない漫画にありがちな「内容は素晴らしいけど作画がちょっと…」というような残念さは一切ありません。
今が買いどき!!
こんな明らかな煽り文句を入れたのには理由がありまして…
すごく失礼な話しですが、3巻までを読んで感じたドキドキ感が、今後も持続するのかはまだ未知数だと思います。
この手の漫画では、
→相手のイカサマを見抜く
→更に上をいくイカサマを仕掛ける
→勝利
という様式美は避けようのないことです。
もちろん、勝負に負けることもあると思いますが、基本的な流れはこれのループではないかと…
その際に、勝負の内容が変わっても、この流れ自体に慣れてしまうのは仕方のないことなのですが避けられないかなという気がします…
上に挙げた他の作品でも、当初の盛り上がりが徐々に薄れていった印象は拭えません…
そういった意味で、第三巻が発売され話の全体像や各キャラクターの魅力や相関図的なものが把握できてきた、いまが買いどきなのではないかと思うのです。
本屋でも大々的にプッシュされているため、販促物をみかけて興味をもった人も多いのではないかと思います。
今の段階でオススメなことに間違いはありません。ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。