地球がくそやばい!!
そんな文言が帯にデカデカと書かれている本作の舞台は巨大円盤(UFO)が上空に接近してきた東京。
そのまま地球が侵略されしまうこともなく、地球人は予想以上に弱かった宇宙人たちと拮抗した戦闘を繰り返している。
そんな変わってしまった日常でも、恋愛に悩み、親に悩み、進路に迷う女子高生たち。
この作品は、変わってしまった世界のなかで、変わらない生活をしている女子高生たちの物語です。
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非日常のなかの日常
同著者の『うみべの女の子』や『おやすみプンプン』など比較的新しい作品は、ありふれた日常のなかで人間の持つ闇に触れるという、言うなれば”日常のなかの非日常”だったと思いますが、
今作はその逆で”非日常のなかの日常”が描かれています。
また、登場人物たちも全体的にハイテンション。
久しぶりに、”明るい浅野いにお”作品を読んだ気がします。
今巻はあくまで導入部分(だと思う)なため、ドラマチックな事件は起こらなず、感想を書くのが非常に難しいのですが、
この何でもない日常を全く飽きることなく全力で読ませる浅野いにおさんの表現力は流石としか言いようがないです。
サブカル御用達と言われていた『おやすみプンプン』ではまったく動かされなかったサブカル心が、この漫画では常にフル稼働でした。
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3.11
宇宙人の侵略に対する大人たちやメディアの対応は、私たちが数年前に見かけた風景と酷似しています。
そう”3.11″です。
この”3.11″という震災をモチーフにした漫画としては西島大介さんの『すべてがちょっとずつ優しい世界』や『Young, Alive, in Love』以外では、初めて目にしました。
とても不謹慎な話ですが、3.11直後の混乱にお祭り騒ぎのような高揚感を感じた人は少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
“メディアのなかの出来事”とまでは言いませんが、大きな被害を直接的に受けていない人たちにとっては、規模が大きすぎることもあり、どこか現実味がない風景をメディアを通して見ていたのではないかと思うのです。
本作に登場する女子高生たちは、円盤がやってきた地域に住んでいるにも関わらず、事件から三年たった現在では、やはりどこか他人事のような感覚でいます。
ことの善し悪しに関わらず”非日常も慣れてしまえば日常となる”。
改めてそのことについて考えさせられました。
そしてディストピアへ
この漫画のタイトルに含まれる”デッド”も”デストラクション”も、今巻では描かれていません。
そして、途中で入る主人公の回想のような文言から予想するに、このゆるやかな女子高生の日常というのは長くは続かないものなのでしょう。
さまざまな伏線や情報が交錯したした今巻。
描かれることのなかった宇宙人。
そして、最後に登場した三年前に亡くなってしまったはずの少年の出現。
今後どのような展開が待っているのか、目が離せません。