女の子になりたい!
そう思ったことのない男性はいないでしょう。
自分が女の子になったら女性の持つ魅力を男性的な視点から最大限発揮できるはず。
そして、もっと今よりもっと人生を謳歌できるはず……!
まさしく”強くてニューゲーム“状態ですね。
しかし、実際に女の子になれたとして、それは本当に幸せなのでしょうか……?
ヤマシタトコモさんの新刊『WHITE NOTE PAD』は、そんな”女の子になりたい”という男性の願望を改めて考えさせられるような作品です。
「私」の人生は奪われた――
1年前、体と人格が入れ替わった男女。
小田薪葉菜(おだまきはな、女子高生・17)と木根正吾(きねしょうご、自動車工・38)は、ある日突然、体と人格が入れ替わってしまった。
別人の体のままで1年が過ぎ、偶然2人は再会する。
少女の体になった男は容姿を磨き美しい読者モデルに、中年男の体になった少女は記憶喪失扱いで定職を失っていた。
再会した“自分”はあまりにも違う“自分”になっていて――。
女子高生(17)と中年男(38)。女と男、人格逆転ドラマ。
あらすじからも分かるように、男性と女性の体と精神が入れ替わってしまう漫画です。
これだけだったら、ありがちな展開だと思います。
恋人同士が入れ替わってしまったり、好きな人と入れ替わってしまったり……
少女漫画などで一度は読んだ事のある話ですよね。
しかし、この『WHITE NOTE PAD』が、他の入れ替わりを題材にした作品と違っている点が二つあります。
年齢差
まず、入れ替わったのがおっさんと女子高生であること。
絵面がヤバい。
イケメンと美少女を入れ替えておけば、奇麗な絵面だったのに……
と思わずにはいられないほど、おっさんの冴えなさが滲み出ています。
一年後
そして、もうひとつの特徴的な点は、入れ替わって一年後から物語がスタートすること。
入れ替わってから一年、お互いに変わってしまった生活を否応無く受け入れてからの再会です。
入れ替わりの契機になりそうなシーンはモノローグで描かれていますが、それも数ページ。今のところ、分かっているのは意識の混濁があるということだけで、具体的な要因は全く明らかにされていません……
スポンサーリンク
強くてニューゲームは本当にあるのか
こんな入れ替わりモノの王道から外れに外れた本作、作品のテーマもニッチなところを攻めています。
恋愛のトキメキなしの入れ替わり漫画の根底にあるのは、強くてニューゲームは本当にあるのかということ。
あらすじにもあるように、入れ替わりによって生活が180度変わってしまった二人。
女子高生になり、人気読者モデルとして世間に認知されている元おっさんの木根正吾。
おっさんになり、社会経験の不足から記憶喪失扱いを受けてしまった小田薪葉菜。
入れ替わった後、どちらが幸せな道を歩んできたのかは誰の目にも明らかに思えます。
冴えない中年が女子高生になったら、それだけでハッピーだと思う男性は沢山いることでしょう。
しかし、そんな単純な話にはしないのがヤマシタトモコさん。
本作を読み進めるにつれ、物事はそこまで簡単ではなかったということが徐々に明らかになっていきます……
中年になってしまった小田薪葉菜はもちろん、読者モデルになって順風満帆に見える木根正吾も幸せではないのです。
人気にあぐらをかき、他人に高圧的な態度をとっている木根正吾。
木根正吾の計らいにより、やっと受け入れてくれた職場(出版社)で必死に役に立とうとする小田薪葉菜。
顔の善し悪しはあれど、どちらの方が他者に好かれるかは一目瞭然です。
これは、再会するまでに二人が過ごしてきた境遇が大きく影響しているのでしょう。
今までの自分を諦めて新たな一歩を踏み出そうとする前向きな小田薪葉菜と、外見の変化したことにより自分と向かい合うことなく成功した木根正吾。
1巻の段階で強くてニューゲームを実感しているのは木根正吾ですが、最後に笑っているのはどちらなのでしょうか……
最終的に元に戻るにせよ、戻らないにせよ、二人の関係や立場がこのまま続くことは絶対にないでしょう。
2巻が楽しみです。