はじめにお伝えしておきたいのは、この長いタイトルを目にして、むず痒い気持ちになった人や、懐かしい気持ちにになった人は絶対に読まない方が良いということです。
昔、そのような音楽が流れる場所によく居座っていて、現在はそんな過去はなかったものとしている人は手に取らないで方が幸せです。
……昔の傷をわざわざ思い出すことはありません。
読まない方が心が穏やなままでいられる漫画も世の中にはあるのです。
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The サブカル
表紙やタイトルから大半の人が予想していると思いますが、本作は俗にいうサブカル系の人たちを描いた短編集です。
ミュージシャンを目指して活動するも芽が出ないまま35歳になった女が、枕営業の末、インディーレーベルプロデュースのJ-POPのボサノヴァカバーCDのなかの一曲を歌えることになったが……。
いい年して夢を捨てきれず、サブカルにまみれて自意識ばかりが肥大した、残念な20代、30代男女の肖像をシニカルな筆致で描く連作短編集。
このあらすじだけでは、本作を自分のこととして感じる人はそこまで多くないでしょう……
なので、本作に入っているタイトルを全て並べてみましょう。
- カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生
- 空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋
- ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園
- 口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画 (MASH UP)
音楽・詩・お笑い・ライター・編集者……
サブカル系が目指しがち職業を広範囲に渡って網羅しています。
他に思いつく職業と言えば映像系くらいでしょうか。
ここまで、あからさまにサブカル系に的を絞った漫画というのも珍しいですね。
内容は全編を通してサブカル系の人たちが可哀想な目にあうという非常にシンプルなものです。
最終にはポジティブな雰囲気で締められる作品もいくつかあるのですが、読後感は決して爽やかではなく、悲壮感漂うものになっています。
そして、Amazonさん試し読みを見ていただければ分かると思いますが、お世辞にもお上手とは言えない作画が、悲壮感に拍車をかけています。
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元サブカル系の人たちへ
タイトルに“元サブカル系だけは読むな”と書いた理由がお分かりいただけたでしょうか。
わざわざ“元”という字を頭に付けたのは訳があります。
それは、現在進行形のサブカル系の人たちにはこの漫画は響かないと思うからです。
元サブカル系の人たちにはご理解いただけると思うのですが、サブカル街道まっしぐらのときは自分は他のなんちゃってサブカル系とは違うと思いがちです。
そのため、この作品で描かれているようなサブカルをネタにしたブラックなコメディーを自分のこととして受け取らないと思います。
同様に、カルチャーにどっぷりだった過去を全肯定できるようなやりきった人にも同様に響かないでしょう。
この漫画で深いダメージを負うのは、あらすじにある通りの“サブカルにまみれて自意識ばかりが肥大した”人たち、かつてなんちゃってサブカル系だった人たちです……
……そうです。私のことです。
薦められたからといって気軽な気持ちで手に取っていい漫画ではありませんでした。。。
この漫画と一緒に、作者である渋谷直角さんの新刊『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』も購入したのですが、また辛い気持ちになるのかと思うと読む勇気が出ません……
そのうち気が向いたら読んでみて、切ない気持ちをここに書こうと思います。