再婚した母。
離婚して以来、「彼氏」と暮らす父。
そんな家族に囲まれて生活する高校生のまゆこはいま思春期の真っ只中。
まゆこの「家出」から始まった、さまざまな人生が交差する心に染むランナウェイ・ストーリー。
記念すべき第一回目の更新は”放浪息子”や”青い花”でお馴染みの志村貴子さんの新刊です。
私が初めて買ったB6版コミックスが”放浪息子”だったこともあり、とても幸先が良いスタートな気がしますね。
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個性豊かな群像劇
さて、さっそく内容に入っていこうと思います。
最近は、長期に渡る連載が多かった志村さんですが、今作は、一話ごとに主人公が代わる群像劇です。
第一話の主人公である”まゆこ”の友人や家族、親戚に対して、各話毎にスポットを当てた構成になっています。
作品の雰囲気としては、初期の短編集である”ぼくは、おんなのこ”や、青い花の巻末にあった”若草物語”が近いでしょうか。
前回の話では、どこにでもいる脇役だったはずなのに、次の話で主人公になった途端、そのキャラクターの魅力がが前面に押し出されるという群像劇の王道的なドキドキを満喫できました。
見出しにも書きましたが、この漫画の登場人物たちは、”個性豊か”という単語が本当にしっくりきます。
漫画のジャンル上、不思議な力があったり、絶世の美人であったりというぶっ飛んだ設定はないのですが、ひとりひとりに確かな個性があり、それらは度肝を抜かれるものばかりです。
日常から外れすぎない明確な個性を感じられる作品というのは意外と珍しいのではないでしょうか。
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志村さん平常運転
しかし、個性豊かな登場人物にドキドキさせるだけで終わらせないのが、この漫画の素敵なところ。
帯に「思春期の少女たちの、眩い”逃避行”の物語」
と書いてあったことや、”ジャンプ改”で連載されているということもあり、”良くも悪くも健全でさわやかな青春”みたいなものをイメージして読み始めましたが、ものの見事に裏切られました。
可愛らしい高校生の青春がメインなのは確かなのですが、重めの設定やシリアスなシーンをちょくちょく挟んでくる。怖い。最初と最後の話が思いのほか重い。
読んでいる最中には、「うへぇ」と変な声が出そうになるようなシーンがありました。
志村貴子さんはジャンプ改でもブレないですね。
しかし、読後感はとても爽やかで”これぞ青春”という気持ちを抱かずにはいられませんでした。
これは、登場人物の”女子高生らしい軽い考え方と思い切りのよい行動力”が前面に描かれていることと、志村さんの”独特な間のとり方”に寄るところが大きい気がしました。
上で挙げた、”放浪息子”や”青い花”でも、トランスジェンダーや同性愛になど、人によっては重く感じるテーマを主軸にしていましたが、”重い題材に重い印象を与えない”というのは志村貴子さんならではですよね。
また、志村貴子作品でよく扱われる”同性愛”については、あらすじにも書いてあるように今作でも扱われています。
ただ、今作ではメインで扱われているわけではないので、コメディー(というのは言い過ぎかもしれませんが)的な面白さで描かれています。お父さんの恋人が可愛いです。
そんな、一筋縄ではいかない女子高生たちの青春漫画。
次巻は、今回の登場人物のその後はもちろん、今回脇役だったキャラクターがメインになる話もあるようです。発売を楽しみに待っていようと思います。