友情と恋愛とSFと、高野苺の『Orange』

orange(5) (アクションコミックス(月刊アクション))

「未来で待ってる」
この言葉を聞くと、たくさんの人がアニメ映画『時をかける少女』を思い出すのではないかと思います。
青春(恋愛)映画としても、SF映画としても、非常に評判の高い映画でした。
劇場公開から10年近く経っても、夏になると見たくなります。

さて、今回紹介する高野苺さんの『Orange』も青春や恋愛、そしてSFを組み合わせた作品です。
『時をかける少女』のようなタイムトラベルとは少し方向性が違いますが、上記の映画が好きな人には興味をそそられる人も多いのではないでしょうか。
私もそう思って手に取った人間のひとりです。

最終巻が発売されたばかりの本作、最初に抱いた期待感とは全く別の、暖かな気持ちで読み終わりました。

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青春・恋愛・タイムトラベル

あらすじについては、特設ページがあるでの、こちらを見ていただければと思います。

一言で伝えるなら、
高校生の主人公(高宮菜穂)が10年後の未来からきた手紙をもとに、憧れていた友人(成瀬翔)の事故死を防ぐ
という内容です。

主人公たちの恋愛模様と、仲間たちとの友情、そして10年後の主人公たちの世界……
それらが絡み合った、恋愛と青春とタイムトラベルをテーマにした作品ということになるのでしょうか。

一つの作品にこれだけの要素を盛り込むのは少しばかり詰め込み過ぎではないのか…と思ったのですが、すべての要素が奇麗にまとまっていて、消化不良な気持ちにはなりませんでした。

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青春漫画

上で三つの要素が盛り込まれているという書き方をしましたが、あえて一つのジャンルに絞るのであれば、この作品は青春漫画なのではないかと思います。

なぜなら、この漫画を読んで一番印象深かったのは仲良しグループの男女の垣根を越えた友情だったからです。

本作は、もともと別冊マーガレットで連載されていたこともあり、主人公の恋愛についての描写は多いのですが、一般的な少女漫画にありがちな恋愛を全面に押し出した作品という印象はあまり抱きませんでした。

その要因となっているのは友人たちの物語への介入率
よほど恋愛的に盛り上がる場面以外では、仲良しグループで行動していまし、深度は違えどメンバー全員が話の内容に絡んでいます。

これは、作品の一番大きな目標が”菜穂の恋愛成就”ではなく、”翔の事故死を防ぐこと”になっていることが大きいからだと思います。
主人公と同様に、この友人たちにも10年後の自分からの手紙がきていて、この目標のために全力を尽くします。

その際に、主人公が抱いている恋愛感情はあまり意味を持っていません。
なぜなら恋愛感情を持っていない他のメンバーも”翔の事故死を防ぐこと”に対して、主人公と同じくらい必死に行動しているからです。 

そういった意味では、主人公の恋愛事情は物語で重要な意味は持つものの、二の次と言えるのかもしれません。
この作品で一番重要なのは、一つの目標に向かって仲間と頑張ることであり、こう思ったからこそ、青春漫画だった読後感になったのだと思います。

SFとして……

さて、上で青春>恋愛という読後感だということを書いたのですが、それではSFとしてはどうなのか……という話をしたいと思います。

タイムトラベルものが好きな人は気になるであろうタイムパラドックスの問題
本作で恋愛や青春に心躍らせている大多数の人たちにとっては、比較的こだわりのない部分だとは思いますが、SF好きにはとっては無視できないであろう問題……

このことについても作中でちゃんと説明されています。

本作では、過去をかえることで変わってしまう未来についてはパラレルワールドであるという世界観になっています。
つまり、過去(高校生の時代)をどんなに変えようとも、現在(大人の時代)には良くも悪くも何の影響も及ぼさないという考え方です。

ただ、”未来からの手紙がきたという設定のためのもの”なので、細部についてはそこまで重要視はされていない印象は否めませんし、SF的にこの考え方がアリなのかは分かりません。
しかし、現在(大人になった菜穂たち)の視点での描写が結構な比重を占める今作においては、誰も不幸にならない良い考え方なのではないかと思います。

このように、様々な要素が折り込みながらも、無事に奇麗な終わり方をした本作。
すでに映画化も決定していて、広告などで作品に興味を持った人も多いのではないでしょうか。
上にも載せた特設ページで試し読みもできるので、興味のある人はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

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関東でデザイナーをしています。 サイト制作・装丁等のご依頼等ございましたらお気軽にご連絡ください。   Site:akanesus.com   Twitter:TakemitsuaN