「のだめカンタービレ」のおかげで、漫画好き層からも注目されるようになったクラシック音楽というジャンル。
今回紹介する「四月は君の嘘」もまた、クラシック音楽をテーマにした作品です。
一巻の発売当初から猛烈なプッシュをされ、ノイタミナでもアニメ化されたので、“題名くらいは聞いたことがある”という人も多いのではないでしょうか。
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あらすじ
昔は神童と呼ばれ、ヒューマンメトロノームと揶揄されるほど正確なピアノを弾いていた「有馬公生」。
しかし、指導者である母親の死をきっかけにピアノの音が聞こえなくなり、演奏から遠ざかる。
それから数年後、中学二年生になった公生は同じ年のヴァイオリニスト「宮園かをり」と出会い、かをりの自由な演奏をみて、そして(半ば強引に)伴奏をさせられたことをきっかけに、少しずつ自分の過去と向かい合い、音楽の世界に戻っていく…
このようにとても王道な物語です。
一見すると飽きがきてしまいそうな内容ですが、それぞれの章のテーマが様々で内容が濃いことや、奇麗な風景描写が多いので、ストレスを感じず読み進めることができます。
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THE 青春
そして、物語も王道なら、扱うテーマもとてもストレート。
- 挫折してしまった主人公
- 人間味のなかった音楽
- 仲間内の絡み合った恋愛事情
- ヒロインの病気が発覚
そして、誰もが予想したであろうエンディング。
概要だけを箇条書きにすると、よくぞここまでベタにしたな…
というほどコッテコテの王道路線。
なんとなく、数年前に流行った”ヒロインが病気で…”のお涙頂戴系の映画を頭のなかに思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
しかし、この「四月は君の嘘」では、そのような映画で感じた薄ら寒さは一切感じません。
むしろ、読後に感じる“清々しさ”は、三田誠広さんの「いちご同盟」を読んだときとよく似ていました。
作中でも同作を意識させるような場面や台詞が登場するので、この気持ちは新川直司さんの狙い通りなのでしょう。
では、なぜお涙頂戴系の映画ではなく、“いちご同盟”に近いものを感じたのかという話になりますが、
主人公の成長を恋愛面だけに依存させなかったことが、一番の原因なのかなと思っています。
もちろん、ヒロインとの交流が主人公の成長に一番大きな影響を与えているのは間違いないのですが、それ以外にも、幼なじみや友人、ライバルとの関係や、母親の亡霊との決別など、恋愛以外での要因も主人公の成長に大きく関わっているということがしっかりと伝わってくる内容になっています。
あくまで、恋愛も主人公の成長の一因として捉え、主人公とヒロインという狭い世界で物語を完結させなかったことが、このす清々しい読後感に結びついているのだと思います。
全11巻あり、全く中だるみしなかったと言えば嘘になりますが、全てが最終巻に繋がっていたと思えるような奇麗な終わり方でした。
巻数の割にすんなりと読めるので、未読の人もぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
特に、三田誠広さんの「いちご同盟」が好きな人は必読だと思います。
サントラをぜひ…
作品の内容とは逸れますが、同作のアニメのサントラが本当に素晴らしいです。美しいです。
この文章を読んで作品の魅力が伝わらなかったとしても、サントラだけは聴いていただきたいです。