ラフダイヤモンド まんが学校にようこそ 1 (ジャンプコミックス)

人生で大切なものは / ラフダイヤモンド 緒方てい

それはとてもちっぽけで、
あってもなくてもいいもんやけど。

それはきっと皆を励ましたり、
たとえほんの一時でも辛いことを忘れさせてくれるんや。

少し前のことになるが、先日プレイステーションが発売20周年を迎えたそうだ。
プレイステーションといえば、もちろん一時代を築いた家庭用ゲーム機のことで、当時プレステを持っていない友達はいなかった。もちろんかくいうわたしも、幼少期からゲームと共に育ってきた世代である。
わたしの最も古いゲームの記憶となると、幼稚園を昼休みに抜け出して、幼稚園の真裏にある祖母の家で星のカービィをやっていたことだろう。はじめは慌てて探しに来ていた先生方も、連日のことに慣れてしまったのかそのうち放っておかれるようになったと、大人になってから母に聞かされた。

「人生で大切なことはすべてゲームに教わった」。そんな言葉がある。もちろん全てとまで言ってしまっては言いすぎだろうが、少なくともゲームに”人生で大切なこと”が含まれていることは疑いようが無い。

それは例えば問題に直面したときの解決方法や、雑学的な知識。主人公に感情移入して心の機微を感じてみたり、あるいはより現実に目を向けてみれば、ゲームを通じて友達を作る方法を学んだりすることもできる。

そしてそれは、漫画についても同じことが言えるだろう。
漫画から学べることは、実に多いとわたしは思う。

緒方ていのラフダイヤモンドという漫画を読んだ。

今作は漫画専門学校を舞台に、そこで奮闘する若者達を描いた青春ストーリーとなっている。

主人公は連載を終えたばかりの高校生漫画家。その主人公が元漫画家の幽霊と出会い、漫画専門学校の講師になる……といった物語だ。
ジャンプ系統の漫画ということもあって、少しのファンタジー展開がありつつも、その内容は基本的に現実的なものとなっている。

漫画業界の裏話や小ネタから、実用的な漫画の知識まで、漫画製作にまつわるあれこれを実に丁寧に描写しているのだ。
わたし自身は漫画を描いたことは無いが、恐らく同人誌などで漫画を描いた経験のある方にとっては共感できることや参考になることも多いのだろうと思う。

また今作の特徴として、各所にジャンプ名作のパロディが使われている。ジョジョ、こち亀、るろうに剣心、ストップひばりくんなど。元ネタとなった漫画を知っているひとならば思わずニヤリとしてしまう場面もあるだろう。

そういった特徴も含めて、今作は全体を通して、漫画を愛する気持ちがこめられているように感じさせてくれる内容となっている。「漫画とはこういうものだよ」、「漫画の素晴らしさはこれなんだよ」といったことを読者に呼びかけるかのように。
そしてそれは間違いなく読者側にも伝わっている。漫画が好きだという気持ちを抱かせる、あるいは思い出させる、今作はそんな漫画なのだ。

息もつかせぬ展開にワクワクしたこと。未知なる幻想世界に想いを馳せたこと。漫画のキャラクタに本気で恋をしたこと。感動的なストーリーに思わず涙したこと。そんな、かつてわたしたちが確かに感じていて、それなのにいつしか慣れきって忘れてしまっていた感情を呼び起こさせてくれる。

まだ1巻ということもあって、物語は始まったばかり。主人公の周辺の人物や専門学校の生徒たちを紹介する程度にとどまっているが、それでも充分に続きを気にさせる構成となっている。
夢見る若者達のこれからに期待して、次巻以降を待ちたいと思う。

そしてもしあなたが夢をもつ若者なのであれば、是非今作を読んでいただきたいと思う。
この漫画はきっと、夢を持つこと、そしてそれを追いかけることの大切さを教えてくれるだろう。

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人が物語を読むのは、人生が一度しかないことへの反逆だ。 そんな言葉を言い訳にして、積み本が増えていく毎日。 Twitter:pooohlzwg