めめんと森(フィールコミックス)(Feelコミックス)

過去と折り合いをつける漫画、ふみふみこ『めめんと森』

葬儀社で式典補佐のバイトを始めたばかりの“めめ”こと目野優子。
葬儀中に居眠りしたり怒られてばかりの毎日だが、教育係の黒川に「殺すぞ」とすごまれると、どうにもときめいてしまって…。
兄との消えない思い出、つまんないセックス、どうでもいい明日。
モヤモヤを抱えてぼんやり生きてきためめが、仕事で「死」に触れ、人を好きになって「生」を知る、世にもいかがわしい純愛物語。

“女の穴”が映画化などで、最近話題の漫画家”ふみふみこ”さん。
過去に”そらいろのかに”を読んでから、ふみふみこさんの作品を読むのは二作目になります。

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恋愛漫画

表紙の”棺に入った女の子”のイラストとタイトルの”めめんと森”から”mement mori”を連想されるた人も多いと思いますが、その名の通り、死を題材にした漫画です。
しかし、主題は葬儀社に新しく入ったバイトの女の子と、その教育係による恋愛劇です。
もちろん、死について描写や考えさせられることは多々ありますが、
比較的近いジャンルである三原ミツカズさんの”死化粧師”などをイメージしながら購入するとガッカリするかもしれません。

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二つのギャップ

冒頭から、ネガティブなことを書いてしまった気がしますが、非常に素敵な作品です。
そして、その素敵さは二つのギャップが生み出していると思います。

題材と描写のギャップ

まず、題材と描写のギャップです。
固く暗い雰囲気になりそうな葬儀屋(そこから連想する死)という題材でありながら、読んでいる最中もそんなに暗い気持ちにはなりません。
ふみふみこさんならでは、キャラクタライズされた登場人物と、暖かみのある画風が緩やかで暖かい雰囲気を醸し出しています。

登場人物二人のギャップ

また、主人公のと、教育係である黒川の。
この二人のギャップもよい味を出しています。
二人とも、過去にトラウマを抱えているという共通点を持ちながらも、その性格は非常に対照的。
ふわふわとしていて、掴みどころのないソフトな印象の優子、
口が悪く、神経質そうなソリッドな印象を受ける黒川。

このあからさまに正反対の二人の掛け合いが、とても面白く魅力的です。

折り合いをつけるということ

こちらは月並みの感想になりますが、最初は感情が表に現れなかった主人公が、物語が進むにつれてじわじわと感情を出すようになっていく様子と、黒川が何かをふっきったような姿は読んでいてとても暖かい気持ちになります。

タイトルの元として使われている重要なテーマ”memento mori”。
日本語にすると”死を思え”という意味なのですが、二人が完全に過去のトラウマを克服することは不可能なのでしょう。

一般的なハッピーエンドの恋愛とは違うのかもしれません。
しかし、二人が苦しみのなかで折り合いを付けて前を向くという姿は心打たれます。

一言でまとめると”心暖まる漫画”と表現するのが一番適切なのでしょうか。
すごく大きなハプニングがあるわけでもなく、盛り上がるわけではないですが、読後はとても穏やかな気持ちになること間違いなしです。

また、暖かな気持ちになるとか書いておいて何なのですが、ふみふみこさんの官能的と呼ぶのがぴったりな絵は非常にそそられます。

興味がある人はぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

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デザイナーをしています。ジャンル関係なく気になった漫画を読んでいます。オススメの漫画を教えてください。 Twitter:@TakemitsuaN