14歳限定症候群 (角川文庫)

壁井ユカコ / 14歳限定症候群

生島ちほ14歳、今日づけで男子になってしまいました―。
同じ中学に通う仲良し女子6人組を襲った、不思議なヤマイ。
関節痛のような痛みを伴うそれは、驚きの現象を引き起こすものだった!親友男子に告白されたあと、男になってしまったちほ、オトナになってしまった咲、そして…犬にまで!?
一方、市内では女子中学生を狙った猟奇殺人事件が起きていて…。この非常事態に、少女たちは!?
予測不能な変身系青春エンタメ。

書店にて、”ショッキングピンク×黄色×女子高生”という自分の好みドンピシャな表紙を発見!!
これはヤバい!!と思い迷わず購入。
後々調べたら”NO CALL NO LIFE”と同一作者でした。この本も表紙を見て買おうか迷った記憶があります。

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あらすじに偽りあり

上に書いてある”あらすじ”ですが、明らかに偽りの文章があります。

それは、最後から2つ目の文にある
“市内では女子中学生を狙った猟奇殺人事件が起きていて…。この非常事態に、少女たちは!?”
という部分。

…ほぼ関係ないです。
いや、厳密には関係なくはないのですが、少女たちが猟奇殺人事件を解決する訳ではなく、なんなら主要な登場人物のなかには事件に絡まない子たちもいます。

このあらすじを読んで、女子中学生が力を合わせて難事件に挑む!!
という胸の熱くなる展開を期待した方は手に取らない方がよいでしょう。
いつ少女たちが非常事態に立ち向かうのだろう…と期待に胸を膨らませていた私は拍子抜けしました。
このあらすじを読んだら期待してしまっても仕方ないじゃないですか。。。

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現代におけるファンタジー

また、少女たちの身に降り掛かる様々な現象(男になったり、大人になったり、犬になったり)についても、同じように肩すかしを喰らいました。
各々の登場人物に対して”関節痛を訴えて病院にいき、赤と白の薬を貰う”という共通の描写があり、
そのことが、この超常現象を起こした原因であること暗に示されているのですが、

  • 具体的に誰が黒幕である
  • 何でこのような現象を起こしたか
  • その原因を解決する(犯人を追及する)

などの描写は一切ないです。

そもそもが超常現象なので、具体的な原因(この薬の成分が云々)やら、その解決方法がないのは仕方がないかもしれないですが、せめてこの犯人(と思われる医師)が、現象を起こした理由や背景などは書いておいて欲しかったです。

これなら”夜中に魔法使いがやってきて杖を一振り!!なんと女子中学生が男性に変わってしまったではありませんか!!”などというコテコテのファンタジーの方が納得できたと思います。
そのような小説が読みたいかどうかは別として。

その他の部分も、自分が読むページを飛ばしてしまったのではないかと思うような唐突な心理の動きなどはありましたが、上二点ほど気にならなかったのでとりあえずは省略で。。。

後半にいくほど面白い

この物語は、全5章の14歳の女子中学生6人の群像劇になっています。
そして、後半にいけばいくほど面白いです。女子中学生らしからぬ暗くさを孕んでいて。

最初の一話を読んだ段階で、漫画でよくみかける”朝起きたら女の子になっていた!!”の逆バージョンで、あまりのテンプレート具合に全部読み切れるのか不安になっていたのですが、二話以降はどんどん引き込まれていきました。

各話についてのあらすじを紹介するのは避けますが、

  • 三話目の最後の部分
  • 四話目の歪んだ愛情

は本当に良かったです。

14歳という年齢

表題にもある”14歳”という言葉が持つイメージが端的に表現されていました。
もしこれが主人公たちが高校生だという設定だったら、間違いなく内容に違和感を感じていたと思います。
それくらい絶妙なバランスで登場人物たちの心理や行動が描かれています。

最終章にある
「“子供”と“大人な”境界線上にある“少女”という特殊な時間に存在している」
という文章があるのですが、その子供にも大人にもなりきれないチグハグな感覚がしっかりと伝わってきます。
そう考えると、上で不満点として挙げたような”唐突な心理の動き”は14歳という微妙な年齢だからこその描写であって、その年齢をとっくに過ぎ去ってしまった自分だからこそ理解できなかったのではないかという気持ちすらします。

うーん。14歳でこの小説を読んだ人にぜひ感想を聞いてみたい。

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デザイナーをしています。ジャンル関係なく気になった漫画を読んでいます。オススメの漫画を教えてください。 Twitter:@TakemitsuaN