これぞ大団円、チカの『これは恋のはなし』

これは恋のはなし(10) (KCx)

入院していた母親の突然の帰宅に戸惑いを隠せない遥。
その母親が取り乱したとき、遥を守ろうと必死になるけれど、どうにもできない杉田。
そして、駆け付けた真一は初めて遥に対する本当の想いを語りだす。
恋と呼ぶには幼かった感情と恋とは呼べない同情の気持ちから寄り添ったふたりが辿りついた結末とは…。
そう…これは恋のはなし。ついに完結!!!

“三十路を越えた小説家(真一)と小学生だった少女(遥)の恋愛”がついに完結。
この漫画を読み始めたのは四巻が発売された頃だったので二年以上前になります。長かったような短かったような…

当時、”うさぎドロップ”がメディアミックスされ、育児・親と子世代の恋愛漫画というものが抵抗なく受け入れられてきた時分ではありました。
しかし、いくらなんでもこの年齢差は凄まじい。特にチカさんの絵は宇仁田ゆみさんのようにデフォルメされていないので、余計に年齢差が際立つな…などと思っていたのを思い出します。

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王道の感動

予定調和な終わり方でした。王道です。ハッピーエンドです。
こう書くと、”つまらなかった”という意見に聞こえるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

この話に衝撃の結末や、予想外の展開などは全く必要ない。
この漫画を読んでいた誰しもが、このようなハッピーエンドを期待して読んでいたのではないでしょうか。

また一方で、王道と言われるほど前例がある分、どうしても過去の名作と比較されてしまいがちで、このような王道を過不足なく描くというのはとても難しいところ。
それを、奇をてらわずにしっかりと話を描き上げたチカさんは本当に素敵な漫画家さんだと思います。

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丁寧な描写の積み重ね

この王道な終わり方を、ここまで納得のできるものにしたのは、これまたテンプレートのような表現で恐縮なのですが、チカさんの丁寧な描写によるところが大きいと思います。

全11巻に及ぶ長編のなかで、全くをもって煮え切らないスタンスをとり続ける真一にヤキモキしたり、物語自体に”なかだるみ”を感じた方も多かったのではないかと思います。少なくとも私は感じました。引っ張り過ぎではないのかと。

しかし、この最終巻を読み、その考えは180度ひっくり返りました。
これまでの丁寧な、ともすると冗長にすら感じる描写がなかったら、この最終巻にはきっと不満が残ったのではないかと思うのです。
いかにもな終わり方で、なんとなく奇麗に終わる。そんな風に感じてしまったかもしれません。
少なくとも、もっと盛り上がりのある終わり方にして欲しかった。驚きが欲しかった…などという思いはこみ上げてきたことでしょう。

しかし、今までの積み重ねがあるからこそ、この終わり方が響きます。まさに今までの集大成。
真一と遥、それぞれの背景や、成長の過程、そして葛藤が、今まで丁寧に描かれていたかからこそ、この結末以外はありえないというものになったのではないでしょうか。

そして、色々と引っ掻き回しうえに最後まで報われることのなかった噛ませ犬役の”杉田”にさえ納得がいく終わらせ方を提示でき、登場人物のなかで途中でフェードアウトしたり、不幸になった人物がいない、というのも今までの丁寧な描写があったからこそ。

まさに”大団円”という言葉がしっくりとくる、最終巻にふさわしい奇麗な終わり方をした今作。
完結したからこそ、まだ手に取っていない方にも一気読みをおすすめできる作品です。

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