明日の君に花束を (百合姫)

母と娘の友達と。片倉アコの『明日の君に花束を 』

結婚して名字を失い、子供を産んで名前まで失くした私に、また名前を思い出させてくれた

久しぶりに百合姫コミックスというものを買いました。
数年前にデザインが本誌のデザインがリニューアルされ、単行本まで魅力的で手に取りやすい装丁になりました。
今作は完全な表紙買いです。

今回は、そのなかで一番印象的だった”リリー・マルガリーテとかすみ草”について書いていこうと思います。

スポンサーリンク

娘の友達と

“リリー・マルガリーテとかすみ草”は娘の友達と恋に落ちる母親というなんともマニアックなシチュエーションが描かれています。
言ってしまえば”不倫と同性愛”というなんとも背徳間の溢れる設定な訳ですが、
妻・母親という分かりやすいラベルを付けられた母親が、本人自身に目を向け、名前で呼んでくれた娘の友人に心を奪われる様子は、不倫が良いか悪いかは別として、恋愛漫画にありがちな”ただ好きだったから”というような漠然とした理由よりも共感できる気がします。
これも自分が年をとったからでしょうか…

また、この母親の娘を主人公においた”ジプソフィラの儚い思惑”は、二人の恋愛事情に気づいてしまった主人公が、友人の気持ちを蔑ろにする母親に対して憤りを覚えるという話。
母親を咎めたりはせずに、どちらかといえば友人の立場にたっていることや、
“好きなら不倫でも同性同士でもいいと思う”というスタンスなどを考えると、
この母親の娘が、精神年齢的には一番幼く、物事をまっすぐに見ていおり、
母親とは対照的に描かれているところが印象的でした。

スポンサーリンク

惜しかったところ

全体を通しての感想ですが、
各話にしっかりとテーマがあり、すべての話が読みやすいです。
シチュエーション的にも非常に興味を惹かれるものが沢山ありました。
特に同じ会社の上司と部下を題材にした”after9″は素敵でした。

その一方で、登場人物の心情や、物語全体の背景・盛り上がりがいまいち伝わってこなかった話もちらほらと…
ページ数が限られている短編なので仕方ないのかもしれませんが、”リリー・マルガリーテとかすみ草”と”ジプソフィラの儚い思惑”など比較的ページ数の多い話が素敵だった分、少し残念…

片倉アコさんは今作が初単行本らしく、いつか長編が発売されるのを楽しみに待っていようと思います。

スポンサーリンク

デザイナーをしています。ジャンル関係なく気になった漫画を読んでいます。オススメの漫画を教えてください。 Twitter:@TakemitsuaN