白河三兎 – 私を知らないで

私を知らないで (集英社文庫)

中2の夏の終わり、転校生の「僕」は不思議な少女と出会った。
誰よりも美しい彼女は、なぜか「キヨコ」と呼ばれてクラス中から無視されている。
「僕」はキヨコの存在が気になり、後を尾行するが…。
少年時代のひたむきな想いと、ままならない「僕」の現在、
そして、向日葵のように強くしなやかな少女が、心に抱えた秘密とは――。
メフィスト賞受賞の著者による描きおろし。
心に刺さる、青春の物語。

久しぶりに心から読んでよかったと思う小説でした。
読んだ後にここまで両手ばなしで良かったと思えた小説は久しぶりです。

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衝撃のラスト

などと書くと、最近売れ筋の本や映画みたいであまり好きではないのですが、この表現で。
ラストというか、後半というか表現が難しいのですが…
上の紹介にもあるように、転校生の「僕」とクラスで浮いている「キヨコ」の話です。
上の作品紹介にある「クラス中から無視されている」という部分の原因は前半で明らかになります。
そして、そのあと「僕」と「キヨコ」が仲良くなっていき、最後はいじめもなくなりハッピーエンド…
と一筋縄ではいきません。
その後に、更に大きな展開が待っていました。
とてもアップダウンの激しい作品でした。
はじめに暗そうな話題を持ってきて、そこからよくある青春モノだと思わせておいて、
更に落としてからのハッピーエンド…
からの最終章で得も言われぬ気持ちに。
最終章は、すべてが終わったと思いエピローグ感覚で読んでいので衝撃が半端ではなかったです。

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シンプルな文章

分量としては300ページ弱なので、長くもなく・短くもない小説なのですが、
上記の様に、要素としては色々なものが詰まっています。
それなのに詰め込みすぎた感じは全くなくとても読みやすいです。
その一方で、登場人物の気持ちやキャラクターの個性などは十分に表現されています。
主要な登場人物はもちろん、サブキャラまでしっかりと個性があり、それが活かされた演出が多々ありました。
今までの読んだ小説で、これだけの要素をこの分量に詰め込んだものは、
内容の濃度が偏るか、結局何が言いたかったのか分からなくなるものが大多数でしたが、
今回はすんなりと頭に入って来ました。
これは多分、白河三兎さんの文章構成や表現に寄るところが大きかったのではないかと思います。
過多な装飾などがなく、シンプルにも関わらず、充分に伝わってくる素敵な文章でした。
余分なものを削りとって、必要なことのみを入れていくと、この量でもこんなに内容が詰まった作品ができるのだなと感じました。

伏線の回収

この辺りはメフィスト賞あがり(?)の方だからでしょうか。
伏線の貼り方と回収の仕方がとても良かったです。
物語がクライマックスにいくにつれて明らかになっていく「僕」の過去や「キヨコ」の現状について、
前段階で不自然ではない伏線が張られています。
また、章ごとのメリハリがしっかりしているので、伏線の存在を忘れた頃に伏線が明かされたりします。

感想

今年読んだ小説のなかで一番印象に残る作品でした。
主題である主人公の「僕」の成長を明確に描きながらも、
子供の無力さや幼さを無かったことにはしない。
ただの爽やか青春ものでは決してないし、ハッピーエンドかと聞かれると断言できませんが、
強く心に残った作品でした。

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