いままでと違うヤマシタトモコ、運命の女の子

運命の女の子 (アフタヌーンKC)

少女の周囲に、死体の山が築かれていく――。女
刑事が大量殺人犯と対峙するホラーサスペンス『無敵』。
誰もが自分を愛した。そう、彼女以外は……。
苦い初恋の呪縛から逃れられない青年をリリカルに描く『君はスター』。
世界を救えるのは、祝福を受けなかった私だけ。
使命を背負わされた少女と少年の冒険譚『不呪姫と檻の塔』。
青年誌、女性誌、BL誌と幅広く活躍するヤマシタトモコの長編読み切り3編を収録!

書店に足を運び、なんとなく新刊コーナを眺めていたところ、
平積みされた新刊コーナーのなかでひときわ目を引く装丁が。
ヤマシタトモコさんの新刊でした。

上の画像にもあるように、女の子の横顔が大きく描かれているのですが、
目の部分に”赤い箔”が使われています。
女の子の白い肌と黒い髪と合わさって、なんとエキゾチックな。
吸い込まれるように購入してしまいました。

家に帰り何となくカバーを外したら、カバー下は特色で銀が使われていました。ほれぼれしました。

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シリアスが三編

前置きが長くなってしまいましたが、本題に。

今作は短・中編が三話収録されています。
どの作品もジャンルが様々で、一言で”こういう漫画だった”とまとめるのが難しいですが、どの話もヤマシタトモコさんの漫画では今までなかったようなテーマやジャンルが描かれています。

私の中のヤマシタトモコさんが扱うジャンルは、

  • 勢いのあるコミカルさ
  • 共感されやすい働く女性の恋愛
  • 女性の生き方

というものが大半で、
どういうジャンルであれ、とにかく女性がフィーチャーされた作品が多いイメージでした。

しかし、今作ではこのイメージが完全に覆されました。
三話とも素敵だったのですが、そのなかのひとつ”きみはスター”については恋愛が主題だったため省略し、
そのほかの二つについての感想を書こうと思います。

不呪姫と檻の塔

読んで吃驚。まさかのファンタジーもの。
この話に関しても、恋愛は絡めていたのですが、主題に置くわけではなくあくまでおまけ。
何となくファンタジーが描きたくて描いたというようなフワフワとした雰囲気は一切く、硬派な印象。
それが端的に現れているのが、本格的な設定や問題提起。
すべての人類に魔法がかけられる世の中で、ただ一人魔法をかけられなかった主人公。
それだけならどこにでもあるオンリーワン的な描写がファンタジーに置き換わっただけですが、そこから現状の魔法という存在(制度)にまで問題が広がります。
読みながら考えさせられるような作品でした。
SF作品というと言い過ぎかもしれませんが、それに近いものがあるかと。

無敵

さらに衝撃的だったのは、一番始めに収録されている”無敵”。
この話には恋愛要素を一切絡めない。
そしてテーマは”未成年の犯罪”。
旬なテーマというと酷く言葉が悪いですが、この時期によく発売できたなというのが率直な感想です。
回想シーンや心理描写などが合間に入るのですが、基本的には”少女と担当警察官の女性との会話”だけで成り立っている話です。
しかし、ある意味での会話のテンポのよさや、緩急のつけかたから読んでて全く退屈になりません。

そして何よりも素晴らしいのは犯罪を犯したとされる女の子の描写。
まさに”狂気を感じる”という表現がピッタリと嵌ります。
会話中の少女の表情の変化や言葉遣いなどに背筋が凍りっぱなしでした。

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それでも手に取ってほしい

さて、ここまで散々ポジティブな内容を書いておいて、最後にこんなことを書くのもなんなんですが、
全体を通して、今までと同じテンションで手に取ると期待を裏切られる作品になっていると思います。
アフタヌーンコミックスに合わせた作風というのが一番伝わりやすいですかね。
私の場合、それが完全にツボに入ったため大正解だったのですが、”普段のヤマシタトモコさん”を期待して買うと失敗するかもしれません。
しかし、漫画として読み応えがあって面白いのは間違いないです。

また、ヤマシタトモコさんの作品を”大人の女性が好みそうな女性の恋愛漫画”というイメージから敬遠していた人は、この機会にぜひ手に取ってみてはいかがでしょうか。

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1巻完結の漫画を集めました。

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