指先から始まる恋/青春離婚 紅玉いづき

青春離婚 (星海社FICTIONS)

あなたはネット恋愛についてどう思うだろうか。
インターネットが発達し、SNS等で気軽に連絡がとれるようになった昨今、ネット上で恋をする人間が増えたことは、ある意味で必然だった。
もちろん世間には、否定的な意見を持つ人が一定数いることも知っている。だが、誤解を恐れずに率直に言うならば、わたしはネット恋愛は大いに結構なことだと思っている。

かくいうわたしも、ネット上で知り合ったひとと恋をし、時には付き合ったりしたこともあった。
ちょうど出会い系サイトが話題になり始めた頃に青春時代を過ごしたわたしにとって、インターネット──あるいはメールでも──を通じてする、顔の見えない恋愛は、ごく自然なものとして受け入れられたのだ。

インターネットに馴染みのないひとの目には、それは「リスクが伴う」だとか、「関係が希薄」だとか、あるいは「温かみがない」だとか。そんなものに映るのだろうか。
だがこの手の話題が出るときに、わたしがいつもする、お決まりの話がある。

例えば平安時代(もちろんこれは貴族に限った話ではあるが)、恋愛の主な舞台は恋文であった。
女性は人前に顔を出すことも無く、男性から送られる恋文・和歌を通じて想いを伝え合っていた。

昭和のころ、文通というものが流行っていたらしい。
雑誌や、仲介する団体等を通じて知り合った、見知らぬ他人同士が、手紙を通じて交流を深める。
その中には、それが縁で結婚したひとたちも、当然居ただろう。

インターネット上での恋愛も、それと同じではないかとわたしは思う。
平安貴族を思い浮かべれば、雅なことだと言うだろう。文通を思えば、素朴で純粋な心の繋がりを感じるのではないか。

紅玉いづきの青春離婚は、まさしくそんな、新しい世代の恋愛をテーマにした作品だ。
短編三話を収録した本作では、スマートフォン(もしくはSNSやアプリケーション)が共通して登場してくる。そうして彼らは、ネットやアプリを通じて恋をする。

この本を読んで思うのは、確かにそこには生きた人間がいるのだ、ということ。
たとえ舞台が現実世界から仮想現実に代わろうとも、ひとの想いはいつでも変わらないのだということ。

いや、むしろ顔が見えないからこそ、限られた情報から懸命に相手のことを考え、想像し、怯えたり尻込みしたり。そんな風に悩みながら、少しでも相手に近づこうとする。
それは不器用で、そして臆病で、けれど少しだけでも前に進もうとする。そんなひとたちの必死のあがきだ。

けれどそれは、現実世界でする恋愛だって何ら変わらない。

どれだけ技術が発展し、時代が、場所が移り変わろうとも、ひとの営みは変わることはない。
大切な人のことを少しでも知りたいと思い、大切な想いをどうにかして相手に伝えたいと望む。
ひとは、そのために様々な手段を生み出してきたのだ。

文字だけ、言葉だけの関係を続けていると、つい忘れてしまいそうになるが、それが手紙であっても、パソコンや携帯電話のディスプレイであっても、いつでもその向こう側に居るのは血の通った人間なのだということ。
本作はそれを思い出させてくれる。

最後に、この本の帯に書かれていた言葉がとても素敵だったので、その一文をここで紹介したい。
 
『新しい時代のわたし達は、
 指先から恋をする──。』

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人が物語を読むのは、人生が一度しかないことへの反逆だ。 そんな言葉を言い訳にして、積み本が増えていく毎日。 Twitter:pooohlzwg