いなくなれ、群青(新潮文庫)

セカイと彼女、河野裕『いなくなれ、群青』

ぼく。彼女。島。謎。心を穿つ青春ミステリ。
11月19日午前6時42分、僕は彼女に再会した。
誰よりも真っ直ぐで、正しく、凛々しい少女、真辺由宇。
あるはずのない出会いは、安定していた僕の高校生活を一変させる。
奇妙な島。連続落書き事件。そこに秘められた謎……。
僕はどうして、ここにいるのか。彼女はなぜ、ここに来たのか。
やがて明かされる真相は、僕らの青春に残酷な現実を突きつける。
「階段島」シリーズ、開幕。

先月、新潮文庫から発表された新しいレーベル”新潮文庫nex”。
その第一弾です。
同レーベルがツイッターで書いていた”ライトノベルの次”とはどういうものなのかと興味をもち、とりあえず一冊読んでみました。

作者は”サクラダリセット”の河野裕さん。
同作の流行に乗れ切れなかったため、河野裕さんの作品を読むのはこれが初めてです。
また、イラストレーターは”ビブリア古書堂の事件手帖”でおなじみの越島はぐさん。
人気も実績のあるお二人の組み合わせに、同レーベルの力の入れ方が感じとられますね。

さて、読んでみた感想ですが、結論からいうと非常に良かったです。

ジャンルが”青春ミステリ”ということで、公式に書かれているあらすじ以上に、話の説明をするのは難しいですが、がんばって当たり障りのない感想を書いていけたらなと思います。

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青春 > ミステリ

ただ、”青春ミステリ”というよりは”青春もの”といった方がしっくりくると思います。
当然、ミステリ要素は含まれていますし、謎かけと回答、途中に散りばめられた伏線の回収などは充分に書かれており、ミステリとしても全く問題ないです。
特に、島に集められた人物が記号化されすぎていることに対する、回答は感心しました。
しかし、精神や超常現象を物語の前提として置いてしまったのがミステリとしては残念で、原因や解決策を予想することを始めから諦めてしまいました…

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セカイ系

その一方で、青春モノとしてはどうしようもなく心が震えました。
私の大好きなセカイ系の匂いがします。最近ではジャンルとして弱くなってきてるセカイ系。最高です。
彼女=セカイという図式ではないですが、彼女>超えられない壁>セカイという図式が成り立っています。
“僕の好きな彼女を守るためなら、僕もセカイもどうなっても良い”というとてもアツいモチベーションのもと、ネガティブでテンションの低い主人公が問題解決のために水面下で奔走します。
主人公のヒロインに対する気持ちや行動倫理などは、西尾維新さんの”戯れ言シリーズ”を思い出しました。
同作品がお好きな方なら手に取って間違いないと思います。

オタクなら

普段ライトノベルを嗜む層、もしくは嗜んでいた層なら楽しめるのではないかなという総括です。
逆に、上記の主人公の気持ちや、登場人物の性格などが、あまりにも記号化しすぎていて、ライトノベルを読まない人には寒々しく感じられそうです。

この作品を読むまで、新潮文庫nexは”メディアファクトリー文庫”あたりと仲間なのかと考えていましたが、どちらかといえば”メフィスト”の方が近いのでしょうか。
ほかの作品も読んでみないとなんとも言えないところなので、早めに何冊か読んでみなければいけませんね。

しかし、それよりも前に”サクラダリセット”を始めとする河野裕さんの作品を読みたいです。
レビューを見る限り、同作品も今作と同じ雰囲気がするそうで…
非常に楽しみです。

余談ですが、違うブログで新潮文庫nexの装丁とデザインについて書きました。
よろしければ、そちらもご一読いただけると嬉しいです。
こちらからどうぞ

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デザイナーをしています。ジャンル関係なく気になった漫画を読んでいます。オススメの漫画を教えてください。 Twitter:@TakemitsuaN