泥にまみれろ。押見修造の『ハピネス』

ハピネス(1) (講談社コミックス)

「クソムシが」
という言葉を聞いて、大勢の人が押見修造さんの『惡の華』を思い出すでしょう。
サブカル層に大ウケし、賛否両論はあれど斬新なアニメ化までされた作品です。
個人的に、アニメにはあまり心動かされませんでしたが、あのエンディング曲と漫画には大きな衝撃を受けました。

さて、そんな押見修造さんの次なる作品は『ハピネス』。
鮮やかで美しい表紙が第一巻の本作は、たぶん吸血鬼ものです。

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たぶん吸血鬼もの

上で“たぶん吸血鬼もの”と書いたのには理由がありまして…
それは、一巻の時点では本作に登場する人外の存在が、吸血鬼なのかが明らかになっていないからなんです。
公式サイトに載っている粗筋をみる限り、吸血鬼ものだとは思うのですが…

謎の少女に襲われ、決断を迫られたあの夜──。幸せでも、不幸でもなかった僕のありきたりな日常は、跡形もなく壊れてしまった…。首筋に残った“傷”。何かを求めて、止まない“渇き”。冴えない高校生だった、岡崎を待ち受ける運命とは…!?
『惡の華』押見修造が描く、鮮血のダークヒーロー奇譚!

主人公は岡崎。
押見修造さんの作品でよく見かける、スクールカーストの底辺に属している冴えない男の子です。
この岡崎が、夜道で吸血鬼(?)の女の子に教われ、自分の変化と暴走に葛藤するというのが、本作『ハピネス』の第一巻での内容。

作品の雰囲気としては『惡の華』に近く、今のところはシリアスめな内容。
スイートプールサイド』や『ぼくは麻理のなか』で見かけるようなインパクトのある変態っぽさ控えめです。
ただ、控えめは控えめなのですが、今作のようなシリアスな作品のなかにもうっすらと変態っぽさを仕込んでくるのは、さすがとしか言いようがありませんでした。
シリアスなシーンにも関わらず、思わず笑ってしまいました。

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マイナスの主人公

押見修造さんの描く主人公の変化・内からわき起こる衝動に対する戸惑いや葛藤の独特な空気感は今作も健在です。
主人公(補正)の苦悩などという生易しいものではなく、弱い人間が大きな環境の変化に付いて行けなくなったということがひしひしと伝わってきます。
救いがないというか、泥にまみれる感じというか、良い意味で気持ち惡い。
主人公を平凡どころか、いじめられっ子という設定にしたからなのかもしれませんが、主人公の抱く負の感情に、悲劇の主人公らしいカッコつけた感じが一切ありません。

頼れる相手もいなくて一人で悩んで、頭がパンクしてしまい暴走する…
主人公が弱い人間だからこその、苦悩や葛藤の描写が堪能できます。

そして、そんな主人公だからこそ、振り切れてしまった際のギャップや、ほんの少しでも救いを感じる描写が、より際立って魅力的に感じるのだと思います。

『惡の華』があったからこその本作

本作は『惡の華』の成功があったからこそこのような描き方ができた作品なのではないかと思います。
それくらいじっくりと丁寧に描かれている作品という印象を受けました。

もしこの作品が、今まで読んだことのない漫画家さんのものだったら、今とは違う印象を受けたと思います。
第一巻の段階ではインパクトのあるような描写も多くはなく、明らかになっていない設定も多過ぎるため、最後まで面白いのか・最終的に上手くまとまるか、の判断がつき辛かったのではないかと…
しかし、これが惡の華の作者であると考えれば、そんな心配は杞憂です。
次巻も楽しみに待っていても大丈夫という気持ちにさせられます。

こちらで一話目を試し読みできるので、興味のある人は、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

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