花はニセモノ

あなたの好きなものはなに?仙石寛子の『花はニセモノ』

ある朝、目が覚めたら女の子になっていた…!!
…という漫画は数多く存在します。
最近の漫画では『ボクガール』などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

そして、この手の漫画で特徴的なのが主人公の友人(男性)。
突然女の子なってしまった友人に対して、友達以上の気持ちを抱いてしまう描写が見かけられます。

さて、本作『花はニセモノ』も、男性が女性になってしまう漫画です。
この一言の説明だけだと、使い古された内容だと思われることでしょう。
しかし、さすがは仙石寛子さん。
このありふれた題材に、たった一つの要素を足しただけで、全くの別物にしてしまいました。

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ボーイズラブ

そう、その要素とはボーイズラブ
つまり、付き合っていた男性が女性になってしまったという展開です。

ことの発端は年始の初詣。
お賽銭を奮発した歩は、神様のいらない計らいによって女の子にされてしまいます。
同性愛者ということを若いときから自覚し、悩んでいた森は、やっと付き合うことのできた恋人(男性)が女の子になってしまった事実に「なんで女になっちゃうんだよ…!!」と、戸惑いを隠せません。

そのような特殊な状況で、二人の関係をどうするのか…
というのが、この作品の大筋です。

ここまででも、今までの性転換もの(?)とは少し違った雰囲気を感じられると思います。

また、この作品の特徴的な部分として、周りの記憶が置き換わっていることが挙げられます。
それは、本人たち以外は誰もこの状況に疑問をもっていないということです。
歩が女性になった瞬間に、クローゼットのなかは全て女のもの服に変わり、友人や両親でさえ歩が男性であった記憶がなくなっています。
つまり、二人はごく平凡なカップルであるということです。
この対比が、主人公たちの特殊性をさらに際立てています。

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何が好きなのか

このようなよくある性転換漫画とは少し違う切り口の本作ですが、作品としての大きなテーマは共通しています。

それは、何が好きなのかということ。

森は歩のことが人として好きなのか。
それとも、男性である歩のことが好きなのか。

よくある性転換ものの作品での“友達が女性になってから友人が抱える葛藤”とは逆のベクトルで、このような同様の悩みが展開されていきます。

大きなテーマが同一であっても、設定が変わるだけでアプローチや印象がここまで変わるのかというのを感じました。

そして、もともと付き合っていたからこそ抱く“男性でなくなってしまった自分が好かれたままでいられるのか…”という変わってしまった側の不安な気持ちも同様に描かれているのは、この作品ならではではないでしょうか。

性転換ものが好きな人も、少し切ないBLが好きな人にもオススメです。

また、男性が女性になって感じる女性ならではの悩みが今まで読んだ同ジャンル作品と比べてとても細やかなのが印象的でした。この辺りは女性の作者さんだからでしょうか。素晴らしかったです。

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デザイナーをしています。ジャンル関係なく気になった漫画を読んでいます。オススメの漫画を教えてください。 Twitter:@TakemitsuaN