幻想ギネコクラシー 1

沙村広明 / 幻想ギネコクラシー

楽園コミックスから発売された沙村広明さんの新刊です。

沙村広明さんといえば、”無限の住人”が代表作として挙げられると思いますが、
不勉強ながら私は読んだことがありません。
読んだことがあるのは”ブラッドハーレーの馬車”と”ベアゲルター”、”おひっこし”くらいでしょうか。
“おひっこし”に関しては、読んだのがかなり前なので、あまり覚えていないのですが、他の二作品は真面目な作風で、内容を理解するのに少し時間がかかった記憶があります。

さてさて、前置きが長くなりましたがここから”幻想ギネコクラシー”を読んだ感想に移りたいと思います。
もともと、”楽園”ですべての話を読んではいたのですが、単行本としてまとめて読むとまた違った趣がありますね。

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発想が凄い

今作は12話からなる短篇集なのですが、どれもこれも題材がヤバい。
そんじょそこらの日常生活に基づいた短篇集とは全く違います。
どうやったらこのような話が思い浮かぶのだろうというほど、今まで読んだことのない題材が目白押しです。
例えばですが、

  • かまくらをつくるために体が膨らむ女性の話
  • 体が惑星そのものである女性の話
  • 九次元移送器を使ってフードファイトをする女性

など、概要を見ただけで興味をひかれますね。

系統は違いますが、”星新一ショートショート”を読んだときと同じような驚きがありました。

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シュールなのか、シリアスなのか

非常に判断しづらいところです。
最初の話が、
“水槽から出させてもらえない婚約者の妹を救出しようとする…”
という割とシリアスな話なので、終始真面目な漫画なのかと思わせきや…
それ以降の話は、割とシュールです。
上で挙げた3話もですが、興味を惹かれるものの、シリアスな雰囲気はないですものね。
他の話も、ちゃんとオチがついていたり、小ネタを挟んでいたりで、思わずニヤッとしてしまうような場面が多々あります。
しかし、最後はまたシリアスな話で締めています。
上手いですね。
最初と最後がシリアスなせいで、これを書くために読み返すまで終始シリアスな漫画だったイメージを持っていました。表紙もかっこいいですし。

もしかしたら深いのかもしれない…

また、ただのシュールのような話でも、テーマ自体が有名な逸話のオマージュになっているものが幾つかありました。

  • “竹取物語”をモチーフにした”筒井筒”
  • “天地創造”をモチーフにした”新世紀ゴッドスレイヤー”
  • “嘘つき村”をモチーフにした”コップと泥棒、その妻と愛人”

などです。
題材が題材なだけに、一見シュールに作られている話でももしかしたら非常に深い話なのではないかという気持ちにさせられます。

おすすめです

今作で一番好きだったのは”殺し屋リジィの追憶”
内容をざっくり説明すると、
“埋葬後に息を吹き返した女の子が、女の子のお墓を掘り返した少年を罵る”
という話なのですが、
この話の素敵な部分は、台詞が全て方言というところ。
そして、ご丁寧に全ての台詞に注釈が入っている。この無駄なこだわり。素晴らしい。

そんな、シュールさと、シリアスさ、そして深さを感じさせてくれる漫画です。
続刊が楽しみです。

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