漫画の話をする前に、ひとつだけ全く関係のない話をさせてください。
祖母から教わったカレーを美味しく食べる秘訣について。
子供の頃、大好きだったカレーを食べようとした私に祖母は言いました。
「大きなスプーンで食べないと美味しくない」と。
大味のものは大きなもので食べると美味しい、という根拠のない話をされた後に、持っていた普通サイズのスプーンを取り上げられ、大きなサイズのスプーンを手渡されました。
確かに、大きなスプーンで食べたカレーはいつもよりも美味しい気がして、その後にカレーを食べるときはなるべく大きなスプーンを使うようにしています。
だいぶ話が逸れてしまいましたが、何が言いたいのかというと、大きいのは良いということです。
そう、今回ご紹介するのは、先日最終巻が発売された『富士山さんは思春期』。
この作品に登場するヒロイン・富士山さんは、とても大きな女の子です。
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身長差カップルのほのぼの恋愛漫画
この作品を一言で説明するのであれば、背の小さい男の子と、背の大きな女の子とのほのぼのとした恋愛になるでしょう。
連載中から話題騒然!
『カテキン』のオジロマコトが、人生のほんの一瞬にきらめく中学生の思春期をあざやかに切り取る、高身長美少女への愛を込めたラブコメ待望の第1巻!
女子バレー部のエース・富士山牧央(ふじやま・まきお)は身長181センチ。けれど心は思春期の女の子。
ひょんなことから幼なじみの上場優一と付き合うことになって、思春期が大暴走!?
少女漫画では使い古された題材で、私と同じ世代の人なら「ラブコン」を、最近の少女漫画を読んでいる人であれば「ハル×キヨ」などを真っ先に思い浮かべるのではないでしょうか。
しかし、本作が連載されているのは漫画アクション。
そうです。男性寄りの雑誌です。
そして、作者は『カテキン』で有名なオジロマコトさん。
さすが男性向け雑誌、さすがオジロマコトさん。
男性のツボに入るような身長差カップルを描いています。
そのツボとは富士山さんがデカいこと。
……分かります。コイツは何を言っているのかとお思いでしょう。
違うんです。
富士山さんは縦にも横にもデカいんです。
少女漫画で描かれるヒロインのように、背が高くて線の細い、実はモデル体系の女の子ではないのです。
太っているわけではないのですが、ガタイが良い。
そして、体系と比例して性格も大雑把。
少女漫画などで描かれる「実は傷つきやすいの……」などの繊細さなど持ち合わせていません。
素晴らしい。
高身長の女性が好きでも同じ設定の少女漫画にいまいちトキメケなかった人が、思わず手に取ってしまうような魅力がありますよね。
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ぎこちない恋愛
しかし、この漫画の素晴らしい点はそれだけではありません。
むしろ、こちら理由の方が、『富士山さんは思春期』が人気になっている理由ではないかと思います。
それは二人の初々しさです。
誰しもが経験したであろう初めての恋愛。
スマートさなど欠片もなく、とにかくいっぱいいっぱいだった若かりし自分……
今では、微笑ましい思い出として記憶に残っている人も多いのでないでしょうか。
本作は、そんな若かりし頃の記憶をまざまざと思い出させてくれます。
少女漫画にあるようなドラマチックなイベントやキラキラなどはなく、中学生相応の小さな出来事への喜びや、二人のなかだけの少し特別な経験という、口にすることすら恥ずかしくなってしまうな場面が、これでもかというほど詰まっています。
今で思うととても些細なことだけど、当時はすごく眩しかった気がするなぁ……という、なんともノスタルジックな気持ちになること間違いなしです。
読んでいるときはむず痒い気持ちで思わず悶絶してしまいそうですが、最終回を読み終わった後は懐かしい気持ちでいっぱいになるはず。
青春時代に味わった甘酸っぱい気持ちを思い出したい人におすすめです。