茜色に染まる青春/橙は、半透明に二度寝する 阿部 洋一

橙は、半透明に二度寝する(1) (講談社コミックス)

どうも、今回からComicaに参加させていただくことになった水上下波です。
よろしくお願いします。

青春をテーマにした作品は枚挙に暇がありませんが、それだけ多くの作品があるということは、必然、青春ものを好む人も多いということでしょう。

ちなみに、青春作品愛好者には、自身の青春時代が満たされていなかった人が多いと聞いたことがあるのですが、果たして本当なのでしょうか。

かくいう私も、無類の青春もの好きを自負しているわけですが、しかし、青春とは何かと問われると、それに答えるのはとても難しい。
青春とは、楽しかったり切なかったり、不条理だったり勢いだけだったり。複雑だったり単純だったり。そんな矛盾した感情が、グチャグチャに入り混じったものだからだ。

今回ご紹介させていただく、橙は、半透明に二度寝する。は、まさしくそんな矛盾した青春。リアルとファンタジーとが混じった世界を舞台にした作品である。

リアルとファンタジーの融合とはどういうことかというと、この作品世界、設定がぶっ飛んでいるのだ。

ドキドキすると爆死(!?)してしまう女の子の恋模様だとか、親友の首を切り取ってしまった女の子の(でもなんだかんだ仲直りする)話だとか、夜な夜なイカ 型宇宙人(というかイカ)と戦う女の子だとか。失踪した兄弟を探すために潜水艦を作り続ける六つ子の話だとか。

そんな少し不思議な世界を生きる若者たちを、オムニバス形式で描いている。

印象的なのは、この世界を生きる登場人物たちにとっては、不思議は日常そのものだということ。現実にはあり得ないようなことでも、彼女たちはいとも簡単に、 当たり前のように不思議な日々を受け入れてしまっている。

ファンタジー世界の中で描かれるのは、これ以上ないくらい普通な、等身大の少年少女の姿。それこそ、まさしく青春ではないかと、私は思う。

たとえ何処にいようとも、そこに生きているのは、(かつて私たちがそうであったように)まさしく若者そのものの姿なのだということを実感させてくれる。

反対に、リアルの象徴として描かれているのが大人の存在。この作品内には眼帯の警察官が各話を通して登場してくるのだが、彼はガチガチの現実主義者として、どこか醒めた目線で物語を見守っている。それはまるで、読者の視点そのもののように。

そんな日常と非日常の対比がこの作品の魅力の一つなのだろう。

だがそれは、ある意味では諸刃の剣でもある。シリアスに過ぎればグロに。あるいは、その逆ならば単なるギャグになりかねない題材を、切なく爽やかな青春ものとして昇華させている作者のバランス感覚はまさに鬼才と呼ぶに相応しい。

もしあなたがグロにそれなりの耐性があり、普通では無い世界を普通に生きる若者の姿をみたいと思うならば、異常の中の日常を、是非体験してみて欲しい。

試し読みはこちらから

余談だが、「青春」という言葉の語源は中国の五行思想からのもの。若さや始まりを表す言葉である「青」と「春」を繋げて青春と表現したそうだ。

そして五行思想では、青春の後には、「朱夏(しゅか)」「白秋(はくしゅう)」「玄冬(げんとう)」と続く。

青春から朱夏への移り変わり。青空から夜への過渡期こそが、夕焼けの茜色。すなわち橙なのかもしれない。

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人が物語を読むのは、人生が一度しかないことへの反逆だ。 そんな言葉を言い訳にして、積み本が増えていく毎日。 Twitter:pooohlzwg